「口ゴボ」(くちごぼ)という言葉をご存知でしょうか?
「口元がゴボッと前に出ている」状態を指す言葉です。正式な医学用語ではないので、歯科医師でも知らない人がいますが、若い女性の間では、わりと一般的に使われているようです。
専門的には「上顎前突傾向」とか「アデノイド顔貌」とか言われる状態に近いようですが、必ずしも「口ゴボ」とイコールではありません。「口ゴボ」の方が、定義が曖昧でより広い範囲に使われています。
「口ゴボ」の原因
「口元がゴボッと前に出ている」ワケですから、骨がでっぱっているように思われるかもしれませんが、実際には「顎の骨の劣成長」の方がほとんどです。上顎の骨が十分に発達している方は、歯列のアーチがおおきくなり、余裕を持って歯が並ぶようになります。その結果、逆に口元はスッキリと収まってきます。
しかしながら、劣成長の方は、歯列のアーチが小さくなってしまいます。アーチは小さいですが、正常に成長した方とほぼ同じサイズの歯がはえてきますので、歯が前にはみ出すように並んでしまい、結果的に「口ゴボ」になってしまうのです。
「口ゴボ」の悪影響
「口ゴボ」の方は、口元が前に出ているため、唇が閉じにくいことがあります。ムリに閉じようとすると、おとがい(下顎の先の部分)に梅干し状のシワがでたり、ほうれい線がきつくなったりします。また、口が開きやすいため、自然に口呼吸の回数が多くなり、鼻呼吸の習慣が身につきにくかったりします。さらに、下顎が後ろに下がるタイプの「口ゴボ」の方は、顎と首の境が不明瞭な顔立ちになりやすく、これもスムーズな呼吸を妨げてしまうことがあります。
「口ゴボ」のチェック方法
定義の曖昧な「口ゴボ」ですが、大まかな判定方法があります。それは「エステティックライン」をチェックする方法です。
「エステティックライン」は、アメリカの矯正専門医ロバート・リケッツが1954年に提唱したもので、横顔を見た時に鼻の先と下顎の先(おとがいと言います)を結んだ線のことです。
このエステティックラインに唇が軽く触れるか触れないかくらいであれば、比較的整った横顔だと考えられます。
逆に、唇がエステティックラインに深く
食い込んでいると「口ゴボ」的な状態ですし、唇がエステティックラインとまったく重ならない場合は、下顎がでている可能性があります。
鼻先と顎先に定規を当てると、エステティックラインを具体的に感じることができます。ご自分の横顔の写真に線を引いてみるか、あるいは定規をあてた写真を撮ってみるかすると、よくわかると思います。
「口ゴボ」の治し方
いったん「口ゴボ」になってしまうと、自力で治すことは非常に困難です。程度にもよりますが、後ろの歯を抜いて、前に出ている歯を後ろに下げていくことで、唇の膨らみを減らしていく方法が有効です。
「口ゴボ」の治療で矯正する場合も、目立ちにくい「マウスピース矯正」は有効な方法と言えます。
ただ「口ゴボ」の程度がキツい場合や、完全な改善を求められる場合は、下顎の骨を切ってグッと前にだす「外科的矯正治療」を検討されてもいいかもしれません。
「外科的矯正治療」に対応している歯科医院は非常に少ないので、ご自身で探せない場合は、今通われている歯科医院から紹介してもらいましょう。