PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)
歯科衛生士が専門器具を使って、歯の表面についた汚れをクリーニングすることをPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニングの略)と呼びます。
しかし、器具で汚れを取り除く際、歯の表面から汚れを剥ぎ取るようにするため、歯の表面がかなり傷んでしまいます。
歯の表面が傷むとざらざらしたり、でこぼこしたりするため、かえって汚れがつきやすくなってしまいます。
このため、私たちは汚れを取り除いた後、歯の表面を滑らかにするケアを行っています。
PMTCによるクリーニングは、奥歯などに多い磨き残しの歯垢や歯石、歯磨きだけでは落ちにくい茶シブやヤニをきれいに落とします。さらに、歯の表面をクリーニングしたため傷んでしまった表面のケアも行います。
歯垢が付着してザラザラした感触のある歯の表面には、多くの虫歯菌や歯周病菌が住みついています。細菌は肉眼で見ることはできません。
ですから、どんなに丁寧に歯を磨いても、完全に取り除くことはできません。
唾液による歯の再石灰化を促すため、歯の表面のざらざらしている場所や磨き残しの歯垢など専用の特殊な機器できれいに取り除きます。
また、歯周病菌が住むことができない環境作りのため、歯と歯茎の境目もきれいに掃除をします。
定期的な通院で、生涯自分の歯で過ごす
プロの手による歯のクリーニング「PMTC」を、3~6か月に1回程度の割合で定期的に受けて歯をきれいにする。
そして、次のPTMCまで、きれいな口内環境をできるだけ保てるよう自分で正しい歯磨きを続ける。
歯の健康を長く保つにはこうした努力が欠かせません。
歯科医院は、歯が痛くなったり歯が抜けそうになったりしてから治療を受けるための場所ではないと、私たちは考えています。
もちろん、そうした治療も行いますが、本来は虫歯や歯周病にならないように予防するために通う場所となるべきだと思っています。
歯が抜けてブリッジや入れ歯などになって初めて、人は歯が抜ける不自由さを理解します。しかし、みなさまにはそんな不便を味わっていただきたくない。一生涯、自分の歯で食べられる快適な生活を送っていただきたいと切に願っています。
そんな生活を送るためには、口の中の環境を健康に保ち、虫歯や歯周病などを予防することが大切なのです。
痛みを心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、PMTで痛みを感じることはほとんどありません。気持ちよさに居眠りする方もいるほどです。安心して受けてみてください。
歯磨き指導に力を入れています
「毎日、歯磨きしているのに虫歯や歯周病になってしまった」という方はいらっしゃいませんか。でも、それは歯磨きの仕方に問題があるのかもしれません。正しい歯磨きを続けていれば、ほとんど虫歯になることはありません。
虫歯や歯周病の原因は、口の中にすみついた細菌です。歯磨きとは、虫歯や歯周病の原因である細菌を除去することなのです。
虫歯の原因となる細菌は空気を好むので、多くの菌は歯の表面にくっつきます。特に多いのは、ザラザラした歯の表面や、詰め物やかぶせ物の段差がある虫歯治療を受けた部分、歯と歯が重なっている部分などです。そこに歯垢(プラーク)となって固まってついています。歯のツルツルした部分にはあまりいません。
一方、歯周病の原因となる細菌は空気が嫌いです。そのため空気が届きにくい歯と歯茎の境目の奥に入り込んでいきます。
歯磨きはこうした習性がある虫歯菌や歯周病菌のかたまりである歯垢を落とすことが大切です。歯ブラシの選び方、磨き方一つ一つに注意が必要です。
- 1.歯ブラシのヘッド
- 歯ブラシを選ぶとき、ヘッドがやや小さめものを選びます。歯と歯が重なっている部分や歯と歯茎の境目など狭い場所を磨くには、ヘッドが小さい方が便利で、細菌をきれいに落とせます。
- 2.歯ブラシの毛の硬さ
- 普通の硬さか、やややわらか目の毛が歯磨きには最適です。硬めの毛は、力を入れすぎると歯や歯茎を傷つけてしまいます。また、細かいところまで毛先が届きづらく、うまく使いこなせません。特に歯茎に炎症がある場合は、やわらかめの歯ブラシを使用しましょう。炎症が治まってきたら普通の硬さの歯ブラシを使っても構いません。
- 3.歯ブラシの正しい握り方
- 歯の汚れをしっかり落とそうと、力を入れてゴシゴシ歯を磨く方がいらっしゃいますが、それは誤りです。
力を入れすぎると、奥歯の奥の部分まできれいに磨けません。また、ゴシゴシと強い力をかけると、歯ブラシの毛先が広がってしまい歯垢をとることが難しくなります。
さらに、強く磨いて歯茎や歯の根に傷がつけば、歯周病の原因となる可能性もあります。歯ブラシは、やさしくゆったりと鉛筆を握るように持つよう心がけてください。
- 4.鏡を見ながら磨く
- 歯磨きをする際、鏡を前にして自分の歯を観察しながら歯を磨くことも大切です。
よく見ると、歯は平らではなく、微妙なカーブや歯が重なっているところがあり、大きさが違っています。
1本1本の歯が意外と個性的で、「前歯に比べ奥歯は磨きにくいな」とか「舌が邪魔だな」とか、さまざまなことを感じることができるでしょう。そうした部分は、実際に歯垢がたまることが多いのです。鏡を前に口を大きく開けて歯を磨きましょう。
- 5.小刻みに磨く
- 早く歯を磨こうと歯ブラシを大きく動かすと、歯と歯の隙間に潜んでいる微量の歯垢を取り切ることはできません。
それではせっかくの歯磨きも無駄になってしまいます。5mmから1cmくらいの距離で、歯ブラシを小刻みに動かしてください。特に歯と歯の隙間や、歯と歯茎の境目は入念に。歯ブラシを小刻みに動かすことで、歯ブラシの刃先が歯と歯の間にまで届き、歯垢を取り除くことができます。
また、小刻みに動かせるようになるとマッサージ効果による爽快感が味わえます。私たちは、定期検診の際、歯磨き指導も行っています。歯の磨き方も昔に比べ進歩しています。10年前に指導を受けたことがある人が改めて指導を受けると、以前とはすっかり変わっていて驚くかもしれません。
あなたの歯磨きが本当に正しい磨き方なのかどうか、再確認してみてください。歯科医院での定期検診で、正しい歯磨きの方法を学び、自宅でも実践すれば、虫歯や歯周病のリスクを抑えられることでしょう。