インビザライン治療では、歯のスペースを確保するために「IPR(アイピーアール)」と呼ばれる処置で歯を削ることがあります。
これは、歯と歯の間を0.2〜0.5mm程度削ることで、スペースを作りだし歯並びを整える方法です。
IPRには、スペースの確保や歯のバランスを整えるメリットがある一方で、歯を削ることによるリスクやデメリットも存在します。
本記事では、インビザライン治療におけるIPRの必要性や、そのメリット・デメリットについて詳しく解説します。
インビザラインを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
インビザライン治療で歯を削る理由
歯を動かすスペースを作るため
インビザライン治療では、歯を理想的な位置に動かすための十分なスペースが必要になります。
しかし、もともと歯が密集している場合や、顎が小さく歯が並ぶ余裕がない場合、そのままでは歯を並べるスペースが足りません。
そこで、IPR(Interproximal Reduction)と呼ばれる処置で、歯の表面をわずかに削ることでスペースを確保します。
IPRでは、削る量が歯と歯の間を0.2〜0.5mm程度であるため、削る範囲はエナメル質内に留まり、歯の健康や強度に大きな影響を与えにくいのが特徴です。
スペースを作ることで、歯が無理なく移動しやすくなり、スムーズな矯正治療が可能になります。
特に、軽度〜中等度の歯のガタつき(叢生)がある場合、抜歯をせずにIPRを行うことでスペースを確保し、歯を整えることができることがあります。
これは、できるだけ抜歯を避けたい方にとって有効な方法といえます。
ただし、歯科医師の判断により、スペースの確保が難しい場合は、抜歯を伴う矯正治療が推奨されることもあります。
歯の大きさ・形を整えるため
インビザライン治療では、歯の大きさや形が不揃いな場合、噛み合わせのバランスが崩れたり、仕上がりに影響が出ることがあります。
特に、上の歯と下の歯のサイズが合わない場合や、歯が部分的に大きすぎる場合には、IPRを行って形を整えることもあります。
例えば、前歯が大きく目立つ場合や、特定の歯だけが極端に幅広い場合、IPRを行うことで全体の歯並びが均一になり、美しい仕上がりになることが期待できます。
これは、審美的な観点だけでなく、噛み合わせのバランスを整えるためにも重要です。
ブラックトライアングルを解消するため
ブラックトライアングルとは、歯と歯茎に囲まれた部分にできる黒い三角形のすき間のことで、通常加齢や歯周病の進行によって発生することが多いです。
加齢や歯周病の他に、矯正治療後に発生することもあり、特に前歯部の叢生を矯正治療で整えた場合に起こりやすいです。
このブラックトライアングルが目立つと、歯が長く見えてしまったり、食べ物が詰まりやすくなったりするため、審美的な問題や機能的な問題を引き起こすこともあります。
そこで、IPRを行い、歯の側面をわずかに削ることで、歯と歯の接触面を増やし、ブラックトライアングルを最小限に抑えることが可能になります。
ブラックトライアングルが大きくなりやすいと事前に予想されるケースでは、事前に歯科医師と相談し、IPRを行う部位を計画的に設定することで、より満足できる自然な歯並びを実現できます。
歯を削ることに抵抗がある方もいますが、エナメル質の範囲内で削るため、適切な処置を行えば歯の健康に大きな影響を与えることはありません。
インビザライン治療で歯を削るメリット
歯並びの全体的なバランスが綺麗に整う
IPR処置を行うことにより、歯の幅を微調整しながら並びを整えることができるため、より自然で美しい歯並びに仕上がるというメリットがあります。
特に、歯のサイズが大きすぎたり、不均衡な場合は、歯の形を調整することで全体的なバランスが改善されるのが特徴です。
例えば、歯のアーチを綺麗に整え、適切な位置に動かしたとしても歯のサイズが問題となって緊密な噛み合わせが獲得できないことがあります。
そのような場合には、IPR処置を行うことで噛み合わせを整えることができます。IPR処置は最後の微調整でも重要な役割を果たします。
さらに、ブラックトライアングルが生じるのを防ぐ役割も果たします。特に、矯正後に歯茎が下がると、隙間が目立ちやすくなりますが、IPRを行うことで、隙間の発生を最小限に抑えることが可能です。
このように、歯を削ることでより綺麗な歯並びを実現しやすくなる点が、大きなメリットの一つです。
抜歯を避けられる
インビザライン治療では、すきっ歯を除く多くの不正歯列において歯を並べるためのスペースを確保する必要があります。
スペース確保の代表的な処置には抜歯がありますが、抜歯は患者様の健康な歯を失うことになり、負担も大きいため出来ることなら避けたい処置です。
しかし、IPRを行うことによって抜歯を行わずにスペースを確保し、矯正を進めることができる場合があります。
特に、軽度〜中等度のガタつき(叢生)があるケースでは、抜歯を行わなくても、IPRを複数箇所行ってスペースを作ることで、歯を正しい位置に移動させることが可能です。
これは、抜歯を伴う矯正と比較して、治療期間の短縮や、治療の負担軽減につながるというメリットもあります。
ただし、すべてのケースで抜歯を回避できるわけではないため、歯科医師と相談しながら適切な治療方針を決めることが重要です。
後戻りしづらくなる
インビザライン治療では、矯正後の歯の位置を安定させることが重要ですが、IPRを行うことで後戻りのリスクを軽減することができます。
これは、歯と歯の接触面積が増えることで、矯正後の歯の位置が安定しやすくなるためです。
矯正治療後、歯は元の位置に戻ろうとする傾向があるため、適切なスペースが確保されていないと、再び歯が重なったり傾いたりする可能性があります。
しかし、IPRによって歯と歯の間の接触面を増やすことで、歯が正しい位置で維持されやすくなるのです。
矯正後の後戻りを防ぐためには、適切なIPR処置とリテーナーの使用が重要になります。
IPRとリテーナーを活用することで、治療後の歯の安定性を高め、後戻りのリスクを抑えられるため、長期的な矯正の成功につながります。
インビザライン治療で歯を削るデメリット
抜歯と比べてスペースを十分に確保できない場合がある
インビザライン治療において、歯を削ることでスペースを作る方法は、抜歯を避けられるメリットがある反面、十分なスペースを確保できない場合があるというデメリットがあります。
IPRでは、歯の表面を0.2〜0.5mm程度削ることでスペースを作りますが、歯並びのガタつきが強い場合や、抜歯が必要なケースでは、IPRだけでは十分なスペースが確保できないことがあります。
そのため、無理にIPRのみでの矯正治療を選択すると、歯が適切な位置に収まらず、理想的な仕上がりにならない可能性があります。
特に、上下の歯のサイズに大きな差がある場合や、顎のスペースが極端に狭いケースでは、抜歯を併用する方が適切な治療になることもあります。
抜歯を避けるためにIPRのみで矯正を進めた結果、歯が十分に動かず、治療期間が長引くことや、噛み合わせが不安定になるリスク、顔貌のバランスの悪化リスクなども考慮しなければなりません。
歯科医師と相談しながら、IPRと抜歯のどちらが自分の症例に適しているかを慎重に判断することが重要です。
歯を削った直後は刺激を感じやすくなる
IPRは、歯の表面(エナメル質)を削る処置のため、削った直後は一時的に歯が敏感になることがあります。
特に、冷たいものや熱いものを飲食した際にしみる感覚を覚えることがあるため、処置後の数日間は注意が必要です。
エナメル質は、歯の内部を保護する役割を持つ層であり、削ることで一時的に外部からの刺激を受けやすくなることがあります。
通常、削る範囲はごくわずかであり、神経に影響を与えるほどではないため、時間が経つと違和感は軽減されるケースがほとんどです。
しかし、個人差によっては数日から数週間程度、知覚過敏のような症状が続くことがあるため、処置後は過度な刺激を避けるために、冷たい飲み物や酸性の食品の摂取を控えることが推奨されます。
また、フッ素入りの歯磨き粉を使用することで、エナメル質の再石灰化を促し、刺激を軽減する対策も可能です。
もし、しみる症状が長引く場合や、痛みが強くなる場合は、歯科医師に相談しましょう。
健康な歯を削ることになる
IPRの最大のデメリットは、健康な歯の表面を削る必要があることです。通常、歯の治療ではできるだけ削らずに歯を残すことが推奨されますが、IPRでは矯正治療のために意図的に削る処置を行います。
エナメル質は、歯を虫歯や外の刺激から守る重要な役割を果たしており、一度削ると元に戻ることはありません。そのため、過度に削ってしまうと、歯の強度が低下し、虫歯などのリスクが高まる可能性があります。
また、IPRを繰り返し行うと、歯の厚みが減少し、将来的に知覚過敏や噛み合わせのトラブルを引き起こすこともあります。そのため、IPRを行う際は、歯科医師の適切な判断のもと、最小限の範囲で削ることが重要です。
また、すでに治療済みの歯がある場合はIPRを行う位置をその歯に設定することも可能です。治療計画を立てる際に歯科医師にそれが可能かどうか相談してみるのも良いでしょう。
IPRによるリスクを最小限に抑えるためには、処置後に適切なケアを行い、エナメル質の保護に努めることが大切です。
例えば、フッ素を含む歯磨き粉を使用する、定期的に歯科検診を受けるなどの予防策を取ることで、歯の健康を維持しやすくなります。
インビザライン治療で歯を削る方法
IPRでは、歯と歯の間に隙間を作るように削っていきます。IPRの手法には、専用のヤスリや回転バーを使用する方法、ダイヤモンドストリップスで手作業で削る方法などがあり、どの方法で行うかは、IPRの位置や大きさ、歯並びの状態などを考慮して選択されます。
処置は麻酔不要で痛みもほとんどなく、歯の健康に大きな影響を与えることは基本的にはありません。
インビザライン治療で歯を削るタイミング
インビザライン治療で歯を削る(IPR処置)タイミングは、矯正の進行状況や歯の移動計画によって異なりますが、主に以下のタイミングで実施されます。
まず、治療の初期段階でスペースを確保するために削るケースがあります。
マウスピースの装着前や最初の数枚の交換時にIPRを行うことが一般的ですが、がたつきが強すぎる場合は全て一気に行えない場合もあります。
そのような場合は矯正治療が進んでがたつきが緩やかになってから残りのIPRを行うこともあります。
また、治療の中盤や後半で微調整のために削ることもあります。例えば、ブラックトライアングル(歯間の隙間)が目立つ場合や、歯の形状を整える必要がある場合には、治療の途中で追加のIPRが行われることもあります。
IPRの実施タイミングは、治療計画や歯科医師の判断に基づいて計画的に決められるため、気になる方は自分の場合はどのようなタイミングで行われるのか確認しておくと安心でしょう。
インビザラインで歯を削る必要があるかどうか知りたい方は、高知市の「アポロニア歯科クリニック」へご相談ください
インビザライン治療で歯を削る必要があるかどうかは、患者様の歯並びや治療計画によって異なります。
高知市の「アポロニア歯科クリニック」では、インビザラインでの矯正治療を行っており、患者様一人ひとりに最適な治療プランをご提案いたします。
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